鷲尾英一郎の日記

鷲尾英一郎衆議院議員(地元出身!県民党として動く! 筋を通し行動する!)の公式ブログ。鷲尾英一郎本人更新

鷲尾英一郎の日記

外国人技能実習制度の意義と労働環境

 外国人技能実習制度における労働環境問題

先日、共同通信が以下の様に報じている。

 労災による死亡と認定された外国人技能実習生が2014~16年度の3年間で計22人に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。大半が事故とみられるが、過労死も1人いた。(中略)実習生は職種が限られており、労災死比率が日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回っている。実習の名の下に日本人より危険で過酷な労働を負担している現実が示された。

共同通信:外国人技能制度、過労死もhttps://this.kiji.is/325206753472431201

 外国人技能実習制度に対する厚労省の把握状況

この報道を確かめるべく厚労省に資料を要求したところ、外国人技能実習生全産業平均で、死傷者数が平成28年では496人に上るところ、死傷年千人率という指標で見ると2.2ポイントであり、日本国内の全産業労働者でのポイント2.2と変わらないという返事であった。しかもその資料には経験期間3年未満の労働者では全産業労働者が3.3ポイントと記載されており、技能実習生の2.2ポイントは全産業労働者より「むしろ低い」という認識まで示されていた。 

報道にもあるように、実習生は職種が限られており、全産業で平均をとったところで厚労省として意味をなさない。とかく人権上問題があるとされ諸外国から批判を受けており、その点、ここ数年規制を強化しておきながら、精緻な分析を行っていない厚労省は、制度を管理する点から不適切だ。

日本国内の労働者不足が叫ばれているなか、制度を適切に運用していくためにも、状況の適切な認識と分析は欠かせない。今から3年前、法務委員会で、外国人技能実習制度の改善や外国人労働力の活用は喫緊の課題ではないか、と質問したところ、政府としては外国人労働者の活用は中長期課題と宣っていたから、危機意識の薄さは推して知るべしだろう。

外国人技能実習制度の本来の意義からの乖離

外国人技能実習制度は、日本が先進国として、開発途上国の方々へ技術や知識を移転し、各国の経済的発展に協力することが目的であるはずだが、過労死まで出てしまうような現状は非常に問題である。2016年11月には外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)が制定され「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と改めて明記された。現状は、労働力不足の調整に制度が使われざるを得ない状況である。

地方も人材不足が深刻であり、大企業の地方移転が進まないのも「採用が難しいから」という点が大きい。都市が地方の人口を飲み込み、地方は人手不足による供給制約がかかってしまっていては、日本経済の成長に制約となり、都市と地方の不均衡を加速化させる。

同時に、世界に貢献すべき制度の基に日本に学びに来た外国人に日本のネガティブな印象を植え付けることにつながり、労働力の調整の為に技能実習の枠を無計画に増やすことによって管理が及ばず思わぬ事故につながるケースも出ていることは真摯に反省すべき点である。

外国人労働者の環境整備はまさに喫緊の課題なのだ。

 

国連追加制裁決議後の朝鮮半島からの漂着船等状況

朝鮮半島からの漂着船等状況

f:id:washioeiichirou:20180205141043j:plain

 

2017年に漂着した朝鮮半島からのものと思われる木造船等は、2016年に比べると2倍近くになった。事実関係からすれば、報道にもあるように、日本の排他的経済水域で地理的中間線近くの大和堆にて2017年7~8月を中心に北朝鮮漁船が活発な漁を行っていた。海上保安庁によると、当時数百隻にも及んだため、水産庁からの協力要請があり取り締まりを行ったところ、9月中旬以降は北朝鮮漁船については排他的経済水域外での漁にとどまった模様である。

 

日本の漁船が現在は安全に操業している。

2017年11月下旬以降、北朝鮮漁船はほぼ確認されず、日本のいか釣り漁船が大和堆にて安全に操業している状況だ。

2017年11月は前年比6倍の漂着船舶等があったが、2017年夏ごろから秋にかけて日本の排他的経済水域およびその近辺で出漁した木造船が悪天候により難破した後、潮流の関係で日本の日本海沿岸に数か月かけて漂着したということだ。

海上保安庁は生存者から事情を聴取し、また北朝鮮内の状況を公表情報からおしはかりながら、状況を分析していることのことだが、北朝鮮内では漁業資源が重要な外貨獲得源であること、公的機関が事実上管理する中で出漁していることが分かっており、巷間噂される組織的な工作員の侵入経路ということではないようだ。

 

国連安保理による追加制裁決議後の動向に注視

2017年12月の国連安全保障理事会で中国やロシアも含む15か国の全会一致で採択された北朝鮮への追加制裁決議で、漁業資源ならびに漁業権の取引も禁止された。北朝鮮漁業の今年の動きがどうなるか注視しているとのこと。常識的に考えれば、危険を冒して外貨獲得を行う必要性は減少するはずだから、この点に限れば、今年の漂着事案は少なくなると予想される。そうでないとき、違う要因を考えなければならない。

真の立憲主義者の作法

前回、選挙活動における熱狂を省みねばならないことを記したが、平和安全法制の議論において、突如スポットライトを浴びた立憲主義についても冷静に省みるが必要である。

立憲主義を重視するならば解釈余地を問題視すべきである。

民進党に所属し、私は党議拘束に従い平和安全法制に反対した。反対した理由は党執行部の集団的自衛権の行使は憲法違反だとする公式見解とは異なる。私が平和安全法制に反対したのは、自衛権発動の3要件の変更と解釈余地の大きさに根本的課題があると考えていたからである。

政府が提案した新3要件の第一に「我が国、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。」とある。この「危険」の解釈を恣意的に行う余地が大きいのだ。たとえば、ホルムズ海峡の機雷除去や、経済危機のみを理由に集団的自衛権が発動されるならば、どんな拡大解釈も可能となり得る。首相の国会答弁で担保されるには余りにも縛りが弱い。

野党幹部は、平和安全法制は違憲であり、立憲主義違反との理由で反対していた。歴代政府は自らお手盛り憲法解釈を過去何度も繰り返しており、もはや政府のご都合主義によって憲法、特に憲法9条の趣旨は何度も死んでいたのにである。

歴代政府の憲法解釈変更

吉田茂総理は、憲法前文と憲法9条から自衛権すら放棄すると答弁していたが、マッカーサーの方針転換によって、吉田総理の答弁は180度変わり、自衛権まで放棄せずとの方針となり、ここで初めて憲法解釈の問題が生じたのだ。鳩山一郎総理は、国会答弁において自衛隊が軍隊と言っていいものかどうか分からないとし、その後始めて自衛力なる概念を創造して自衛隊の合憲性を補強した。PKO法案に際しては、違憲自衛隊を海外に派遣するなど論外とする論調が強く、当時野党からは、「憲法9条は死んだ」とコメントされた。周辺事態法では、武器弾薬は違憲で、給油活動は違憲ではないとする、武力行使との一体化しない後方支援なる概念を生み出し合憲性を補強した。

そして今回の平和安全法制である。

立憲主義を守れ、との批判がなされたが、概ね意味としては、「政府の恣意的解釈を許さない。」もっと具体的に言えば、「集団的自衛権を一部であっても認めるのは、これまでの解釈の恣意的変更だ」とし、集団的自衛権の一部を認める政府の解釈変更を立憲主義違反と表現しているのである。

政府はこれまでも何度となく憲法解釈を恣意的に変えており、今回の解釈変更のみを立憲主義違反と表現するのは、木を見て森を見ず、本質を看過し枝葉末節に囚われているに過ぎない。つまり集団的自衛権の一部を認めたことのみをもって立憲主義に反すると問題を矮小化してはならないのだ。

憲法典の根本的問題点

これだけ解釈が大きく変更可能なのは、もともとの憲法が余りにも文言が不十分であり、かつその後の解釈の積み重ねによって、原則がどこにあるのか、よく分からない代物になっていると考えるべきなのだ。真の立憲主義者は、憲法を整備して政府の恣意的解釈を許さない方向性を模索し行動せねばならないのであって、護憲では断じてない。度重なる大幅な憲法解釈の変更を許すのは、憲法典自体が問題だからだ。

憲法典に集団的自衛権違憲と書いていないからこそ政府はそれを行使し得る解釈が許されるのである。もっと言えば、自衛権も書いていない。自衛権を持ってはいけないとも書いていないから解釈によって自衛権を持つとしてもよいのである。他方、戦力は持ってはダメだから、自衛力という概念を解釈によって導かなければ自衛隊違憲となる。憲法に書いていないからこそ様々な解釈が生み出されるのだ。

憲法典を改正し、政府の恣意的解釈を抑止し、真に謙抑的な憲法典へ改正を促すことこそ、真の立憲主義者の作法と言える。その意味においては、いかなる憲法改正憲法改悪ではないと断言する。